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「相続登記義務化」について

■背景 ~「所有者不明土地」の現状~

 登記簿上の所有者が死亡した後、相続登記をせず、そのまま登記が放置された状態が何世代も続いた結果、現在の所有者が分からない土地が増加しています。

また、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかないという土地も増えており、これらの土地を「所有者不明土地」といいます。現在、このような「所有者不明土地」は九州本土の面積に相当しており、社会問題となっています。

「所有者不明土地」の増加は、様々な問題を引き起こすことが懸念されています。

・土地が管理されず放置され、隣接する土地に悪影響を及ぼす。

・公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まない。

・民間取引が阻害される。

・課税すべき所有者が特定できず、固定資産税を徴収できない。

・所有者の探索に多大な時間と費用が必要となる。

 →「所有者不明土地」の所有者(相続人)を特定するための国の施策については、下記の記事でも取り上げています。

 参考HP:「長期間相続登記がされていないことの通知が来たら・・・」

■法改正・新法制定

 「所有者不明土地」をこれ以上増やさない①発生抑制・予防の施策と、既に発生している「所有者不明土地」の②利用の円滑化の2つの観点から、民法・不動産登記法等の改正、および通称:相続土地国庫帰属法が令和3年4月28日に成立・公布されました。

 今回こちらの記事では「①発生抑制・予防の施策」を目的とした相続登記義務化について、どのような法律の改正があったのかを具体的に取り上げたいと思います。

■「所有者不明土地」の発生抑制・予防の施策

◇ 相続登記義務化について

(登記を放置することがないように、相続登記を促進する不動産登記制度の変更)

 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務としました。

 今まで相続登記は任意とされていましたが、それを義務化にすることで登記簿の所有者情報の更新(=相続登記による所有権の名義書き換え)を促すことが狙いです。

 具体的には、「相続人であること」と「不動産を相続したこと」の2つの事実を知った時から、3年以内に相続登記の申請をすることが義務とされています。

例えば、自分が相続人であることは知っていたが、被相続人(=亡くなった方)が、地方の山林や私道部分を所有していたことを後になって知った場合には、該当する不動産の存在を知った時が、3年の起算日となります。

また、相続登記を義務化するにあたり、正当な理由のない相続登記の申請漏れには10万円以下の過料という行政罰が課されます。

具体的にどのようなことが「正当な理由」にあたるのか、また過料の具体的な金額の決定については、裁判所が事案ごとに判断するものと思われます。

(詳細については、法務省のガイドラインや政令等で今後発表される見通しです。)

 なお、この3年以内の相続登記申請の義務は、今回の改正「前」に既に発生している相続についても、ペナルティの対象になるので注意が必要です。

 「10年以上前に父が亡くなったが、父名義の実家の相続登記をしていない…」というような場合でも、「改正法の施行日施行日から3年以内」に相続登記の申請をする必要があります。

(施行日は未定ですが、遅くとも令和6年4月28日までには施行される見通しです。)

◇ 相続申告登記の新設

相続登記を義務化することで国民の負担が増えることのバランスを取るために、負担軽減の策も考えられています。それが「相続申告登記」制度の新設です。

相続人が、戸籍等の書類を添付して、「私が相続人です」と法務局へ申し出ることで、相続登記の義務を果たすことができます。相続人のうち1名のみからの申告が可能で、法務局へ提出する書類も少なく済みます。遺産分割協議がまとまっておらず、3年以内に相続登記を申請できない、というような場合でも、この制度を利用することで、相続登記の申請義務を簡易に果たすことが可能となります。

 この制度を利用して申告すると、申告を受けた法務局の登記官は、職権で申告者の住所と氏名を登記します。これは、報告的登記と呼ばれ、あくまで一時的なものなので、申告者が該当する不動産の所有権を取得したということにはなりません。相続登記の申請義務を果たした上で、改めて相続人全員による遺産分割協議で相続する人を決めて、相続登記を申請する必要があります。ただし、この場合に関しても、遺産分割協議が成立してから3年以内に相続登記を申請する必要があります。

■さいごに

 以上が、「所有者不明土地」の発生抑制・予防の施策の1つである相続登記の義務化についての概要でした。

他にも、住所変更登記の義務化や、望まずして相続した土地を放棄できる相続土地国庫帰属制度など、「所有者不明土地」の発生抑制・予防の施策が予定されています。こちらについては、また改めて記事にしたいと思います。

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転ばぬ先の杖~今からできる生前対策~

 相続や生前対策に関するご依頼をいただくなかで、ご依頼者の方から、「もう少し前から準備しておけばよかった」という声を聞くことがあります。

そこで今回は、代表的な生前対策をいくつかご紹介します。

1つ目は遺言書です。

 遺言とは、最期の自分の想いを残したものです。遺言書を残すことにより、相続人間の争いを未然に防げ、自分の思うように財産を分配できます。遺言書にはいくつか種類がありますが、ここでは一般的な自筆証書遺言と公正証書遺言について簡単にご紹介します

 まず自筆証書遺言は、その名のごとく自分で書く遺言書のことです。費用がほとんどかからず簡単に作成できる一方、要式不備で無効になる恐れがあり、開封時に検認という家庭裁判所での手続きが必要になるこという側面もあります。ただし、法務局で遺言書を保管できるという制度もあり、その場合は検認が不要になります。   

 次に公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。公証人という法律の専門家が関与する最も確実な遺言であり、検認は不要です。公証役場に支払う手数料が発生します。

2つ目は任意後見です。

 任意後見とは、判断能力があるうちに判断能力が低下した場合に備えて、後見人を選んでおく制度です。法定後見(判断能力が不十分となった後に家庭裁判所が後見人を選任する制度)とは異なり、あらかじめ契約で自分の信頼できる人に何を支援してもらうかを具体的に定めておけるため、判断能力が不十分となった後も自分の希望する暮らしが実現できます。また、判断能力は問題なくても、身体が不自由で金融機関等に赴くことが難しい場合には、財産管理委任契約を結んでおき、判断能力低下後に任意後見に移行するという選択肢もあります。

3つ目は家族信託です。

 家族信託とは、財産の管理運用処分を家族に任せる制度です。

 家族信託は基本的に委託者、受託者、受益者の3者で構成されています。委託者(財産の管理等をお願いする人)が財産を受託者(管理等をお願いされる人)に託し、受益者(利益を受ける人)のために、あらかじめ定めた目的に従って財産の管理等を行います。

 家族信託では、本人の財産を守ることに重きを置く後見制度に比べ、より柔軟な取り決めが可能です。また、遺言とは異なり、二次相続以降の財産の承継先を決められるという資産承継機能があります。ただし、任意後見にはある身上監護(医療や介護に関する契約などの法律行為)機能はありません。

 上記の制度はそれぞれカバーできる範囲が異なるため、併用することも可能です。

 それぞれのライフステージやライフプランにあったご提案をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

 最後に、生前対策の第一歩として、エンディングノートというものもあります。ご相談にいらした際には、そちらもお渡しできますので、よければご活用ください。

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相続登記の必要書類

相続登記を法務局に申請する際、登記申請書以外に、登記申請人が相続により不動産を取得した事実を証明するための書類を提出する必要があります。以下は、相続登記の際に必要となる一般的な書類です。

《法定相続分により相続人全員の名義とする相続登記する場合》

① 被相続人(亡くなった人)の子供が生まれる可能性のある年齢から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍

② 兄弟姉妹が相続人となる場合は、被相続人の両親に子が生まれる可能性のある年齢から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍

③ 被相続人の登記簿記載住所から最後の住所まで変遷、沿革(つながり)の付く戸籍の附票または住民票の除票

④ 相続人の戸籍抄本

⑤ 相続人の住民票

⑥ 固定資産税の評価証明書(申請する年度のもの)

【法定相続情報一覧図がある場合】

 住所の記載のある法定相続情報一覧図があれば、①②④⑤は省略することができます。

 ③は登記簿記載住所と法定相続情報一覧図に記載された被相続人の最後の住所が同じである場合は省略することができます。

【戸籍謄本について】

 戸籍謄本等は、法改正によりに何度か改製(様式変更)されており、本籍地が変わっていなくても、複数通あることが通常です。また、転籍や婚姻等で異なる市町村に本籍地が変わっている場合は、市町村ごとに発行された戸籍謄本等が必要になります。

 戸籍謄本は、被相続人の死亡した事実及び相続人の確認のために必要とされており、子が第1順位の相続人となるため、「被相続人に子が生まれる可能性がある年齢」まで遡ったものが必要となります。

【「被相続人に子が生まれる可能性がある年齢」とは】

 登記研究149号では以下のような見解が示されています。

「(原則的には)相続人の身分を証する書面として、被相続人が15、6歳の時代からの事項の記載がある戸籍及び除籍の謄本が必要」

この登記研究によれば、15歳以降の戸籍謄本等があれば足りるとされていますが、もう少し若い年齢でも、被相続人に子が生まれている可能性があるでしょう。実務上、何歳以降とは決まっていませんが、戸籍謄本等が必要とされる意味から考えて12歳程度からのものが必要と言えるでしょう。

なお、金融機関の手続きでは、出生からのものが求められることが多いようです。

《遺産分割協議により法定相続分とは異なる割合で相続登記をする場合》

上記の法定相続分による場合の①~⑥の書類に加え、下記の書類が必要となります。

⑦ 遺産分割協議書(相続人全員が実印で捺印したもの)

⑧ 相続人全員の印鑑証明書

【印鑑証明書について】

 ⑧の印鑑証明書は、登記手続き上、不動産を取得する相続人のものは不要とされています。ただし、預貯金等の相続財産が含まれている場合は、金融機関の手続きをする際に相続人全員の印鑑証明書の提出が必要になります。

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